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​水は生命、そして未来のエネルギー

水と共に生きる都市 Vol.2

  • 執筆者の写真: OCI事務局
    OCI事務局
  • 10月7日
  • 読了時間: 4分

〜大規模連携で進む「Floating Future」〜



第 2 回 規模・期間・関与者


オランダ発の国際研究プロジェクト「Floating Future(フローティング・フューチャー)」は、単なる工学的な実験にとどまらず、国の研究助成機関・大学・研究所・自治体・企業・市民団体が一体となって進める壮大な試みです。こうした体制そのものがこのプロジェクトの大きな特徴であり、世界的に注目を集めています。


今回は、プロジェクトの規模、期間、そして関与する多様なパートナーについてご紹介します。


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◾️研究規模と資金


Floating Future は、オランダ研究審議会(NWO: Netherlands Organisation for Scientific Research)の助成を受けて推進されています。その支援額はおよそ530 万ユーロ(約 8 億円強) に達し、5 年間にわたって安定的に研究活動が行われる見込みです。


単に大きな金額というだけではありません。この資金は、「技術開発」だけでなく「制度設計」「社会的受容性調査」「環境影響評価」など多岐にわたる研究分野に配分されます。つまり、Floating Future は「浮かぶ構造物を造ってみる」プロジェクトではなく、未来の都市像を社会全体で検証する実証研究と位置づけられているのです。




◾️プロジェクト期間


研究期間は 2024 年 1 月から 2028 年 12 月までの 5 年間。

この 5 年間は大きく 3 つのフェーズに分けて進められると想定されます。


1. 初期フェーズ(2024〜2025 年)

・各研究機関が担当する分野の基礎調査を実施。

・市民や関係者とのワークショップを通じ、社会的受容性やガバナンスの論点を整理。


2. 中期フェーズ(2025〜2026 年)

・技術的なモデル試験(波動水槽でのモジュール接続実験など)。

・政策・法制度に関する具体的な提案。

・市民参加プログラムや公開イベントを実施し、社会との対話を深める。


3. 最終フェーズ(2027〜2028 年)

・研究成果を統合し、複数の「ケーススタディ」として発表。

・北海・港湾都市・内陸水域など条件の異なる場所に適用できる浮体インフラのロードマップを提示。

・政府・自治体・市民団体と成果を共有し、実装への第一歩を踏み出す。


このように、Floating Future は「理論研究」から「社会的実装の準備」までを含む包括的なプロジェクトとして設計されています。




◾️主導機関と研究パートナー


• オランダ海事研究所 ( MARIN: Maritime Research Institute Netherlands)

Floating Future の中心的役割を担っています。海上試験や浮体構造物のシミュレーションにおいて世界的に高い評価を受ける研究所であり、技術パートのリーダーとして位置づけられています。


加えて、以下の研究機関・大学などが連携しています。


• デルフト工科大学(TU Delft)

世界的に著名な工科大学で、建築学、海洋工学、都市計画などの分野から参画。モジュール設計やガバナンス研究でも大きな役割を果たします。


• フローニンゲン大学(University of Groningen)

社会科学・経済学の視点から「社会的受容性」「経済性」について調査。人々が浮体都市をどう受け止めるかを掘り下げます。


• 王立海洋研究所(NIOZ)

生態系や環境影響の研究を担当。浮体構造が水質や生物多様性に与える影響を評価します。


• デルタレ(Deltares)

洪水対策や沿岸管理を専門とする独立研究機関。浮体都市を従来の水管理政策とどう結びつけるかを検討します。




◾️政府・自治体・企業・市民団体の参画


Floating Future のもうひとつの特徴は、研究機関だけでなく、社会の多様な主体が参加していることです。


• 政府機関

オランダのインフラ・水管理省が参画し、政策立案との橋渡しを担っています。


• 自治体

アムステルダム市やロッテルダム市など、実際に水辺都市を抱える自治体が参加。研究成果を自らの都市戦略に活かそうとしています。


• 企業・スタートアップ

浮体建築を手がける設計事務所、法律事務所、環境技術を扱う企業などが参加し、実用化に向けた知見を提供しています。


• 市民団体

特に注目すべきは、Blue Revolution Foundation のように「市民の声」を積極的に反映する団体が共同発起人として関わっていることです。これにより、「机上の研究」ではなく、市民が実際に受け入れられる浮体都市を目指す体制が整えられています。




◾️OCI の視点から


私たちがこの規模感に注目するのは、まさに 「多分野の協働」こそが浮体都市を現実にする鍵だからです。OCI が掲げる「多目的・移動可能な水上拠点」も、技術だけでなく制度・環境・社会との接点を同時にクリアしなければ実現できません。Floating Future の体制は、まさにそのモデルケースといえます。政府、研究者、企業、市民が一丸となって未来の都市像を描く姿勢は、OCI が目指す「海洋文明創造」の理念とも重なります。


OCI としても、このプロジェクトの進展を追いながら、わたしたちの「Project Seatopia」にどう応用できるかを考え続けていきます。



参考

※1 Floating Future公式サイト  floating-future

※2 Blue Revolution  bluerevolution.org


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