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​水は生命、そして未来のエネルギー

船の上で水をつくる!? 〜海水から真水を得る仕組みとは〜

  • 執筆者の写真: OCI研究グループ
    OCI研究グループ
  • 4月23日
  • 読了時間: 3分

海の上には、目の前に大量の水が広がっているのに...。

実は「飲める水」は一滴もない。


そんな矛盾の中で生きるのが、船の世界です。

では、長い航海をする船や海で暮らす人たちは、どうやって水を確保しているのでしょうか?


ここ船上でも、海水の淡水化技術を用いた造水装置が搭載されています。

今回は、「船の上で海水から真水をつくる」3つの代表的な方法をご紹介します。


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◾️船上における海水の代表的な淡水化方法


1. 蒸留法  〜エンジンの熱で水をつくる〜


昔ながらの定番方法が「蒸留式」です。

仕組みはシンプルで、海水を加熱して蒸発させ、その蒸気を冷やして水だけを取り出すというもの。


船のエンジンは航行中にたくさんの熱を出します。蒸留式は、ディーゼルエンジンの加熱を防ぐ冷却水の水の熱、つまり排熱を使って海水を熱することで、効率よく水を作ることができるのです。大型の貨物船や自衛艦など、長期運航する船ではこの方式が多く使われており、船舶用造水装置の9割がこの蒸留式となっています。


しかし近年では、環境対策や経済性向上を目的とした省エネルギー化の対応のため、船舶改良が進み、航行時の出力を抑えるようになってきています。そのため、海水を熱するのに必要な冷却水の量は減少し、排熱温度も下がる傾向にあります。これらの問題に対し、造水装置の内部を真空化させ圧力を下げて低温蒸発を促すなど、年々限られていく排熱で必要な量の水を作り続けるための技術開発が日々進められています。


👍メリット

・水質が非常に良い(純水に近い)

・海水の塩分濃度に影響されにくい

・エンジンの“余熱”を利用して水を作ることができる


👎デメリット ・装置が大きく、定期的なメンテナンスが必要

・エンジンの省エネ化に伴い、加熱に必要な温度確保が難しくなっている


2. 逆浸透(RO)法  〜膜を通して塩をカット!〜


近年注目されているのが、「逆浸透膜(RO)」を使った方法です。

これは、先にご紹介した「まみずピア」でも採用されていました。


高い圧力をかけて海水を“特殊な膜”に通すことで、水分子だけを取り出し、塩や不純物をシャットアウトする技術で、ここで抽出された真水はタンクに貯蔵され、船舶の生活用水や飲料水として利用されます。逆浸透膜を使用した装置はコンパクトなものも多く、探査船やヨット、小型船などに適しています。また、電気があれば動くので、太陽光発電との組み合わせも可能です。


👍メリット

・コンパクトで船舶にも設置がしやすい

・高い純度の真水が生成できる


👎デメリット

・膜の交換や洗浄など、日々のメンテナンスが欠かせない

・高圧ポンプの電力が必要

・大型船舶への搭載には、蒸留式より初期費用が高い場合がある



3. ソーラースチル  〜太陽の力だけで水をつくる〜


もし電気もエンジンも使えない状況になったら?


そんなときに役立つのが「ソーラースチル(太陽熱蒸留器)」です。


これは、太陽の熱でゆっくり海水を蒸発させ、出てきた蒸気を集めて飲める水に変える装置です。非常用の救命ボートなどに搭載されており、電気を一切使わず、静かに水をつくってくれます。ただし、生産量はかなり少ないので、あくまで“非常用”です。


最近では、蒸発+ROの組み合わせなどハイブリッド方式も登場しています。日本の自衛隊の護衛艦は蒸発式とRO両方を備えていることが多いです。



◾️水をつくる技術が未来を変える?


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こうした船上造水技術は、実は今、海上だけでなく、災害時の緊急支援や水資源が限られた地域への展開も進められています。


再生可能エネルギーとの組み合わせによって、“自立型水供給ユニット”として活用できる未来も、すぐそこまで来ているのです。


海の水が飲み水になる。

それは、人類の技術が自然と対話する、ひとつの形かもしれません。

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