top of page

​水は生命、そして未来のエネルギー

SEA JAPAN 2026 訪問レポート 

  • 執筆者の写真: OCI研究グループ
    OCI研究グループ
  • 5月5日
  • 読了時間: 7分

― 海と未来技術が交差する場所で見えた「現実」 ―


2026年、SEA JAPANを訪れました。 この展示会は、造船・舶用機器・通信・環境技術など、海に関わる最前線が集まる場所です。


単なる展示の場ではなく、「これからの海の使い方」「船の役割」「社会インフラの在り方」まで含めて、未来の方向性が見える場でした。


今回の訪問では、いくつかのブースとセミナーを通して、海を舞台にした技術の現在地と、その先の可能性をより具体的に感じることができました。


※本記事に掲載している写真は、会場で配布された資料の一部を紹介目的で撮影したものです。内容の著作権は各企業に帰属します。




◾️海水から水を生み出す技術 株式会社ササクラ


株式会社ササクラは、日本の海水淡水化装置およ び熱交換技術の専門メーカーです。造船、発電、環 境分野における水処理・熱エネルギー利用の技術で 知られ、国内外の船舶・プラントに製品を供給しています。


こちらのブースでは、船舶に搭載可能な海水淡水化装置についてお話を伺いました。


海水を飲料水へと変換するこの技術はすでに 実用段階にあり、長期航海や遠洋での活動を支える“見えないインフラ”として確立されていま す。


「水は外から運ぶものではなく、その場で生み出すものへ」という発想から、1949年創業後の1951年には船舶用造水装置が製造されています。現在では、アジアシェアNo.1になっているそうです。


また、陸上では水資源が少ない地域であるサウジアラビアにて大型海水淡水化プラントを開発し同社の製品が納入されています。





◾️船は“造る”から“解決する”へ


三菱造船株式会社



三菱造船株式会社は、日本の大手重工業メーカーである三菱重工業株式会社の造船事業を担う子会社です。商船・客船・ 防衛艦艇などの設計・建造・修繕を行っています。


【セミナー:「海を舞台に未来を拓く~三菱造船の事業と製品」】


このセミナーで最も印象に残ったのは、三菱造船がすでに「造船会社」という枠を超えているという点でした。


同社は現在、「エンジニアリングによるソリューション提供」を中核に据え、造船とエンジニアリングを両輪とした事業へと進化しています。



1. 環境・新燃料への対応

脱炭素社会に向けた取り組みは非常に具体的でした。


・LNG燃料向けのFGSS(燃料ガス供給システム)

・アンモニア燃料対応の「MAmmoSS」

・CO2輸送・回収(CCUS)に対応したLCO2輸送や船上回収装置


これらは単なる研究ではなく、すでに実証・実装フェーズに入っている技術群です。


2. DXによる“造船の外販化”

さらに興味深かったのは、造船ノウハウのソフトウェア化です。


船舶3Dシステム「MATES」

性能・船型ツール 「MiPoLin®」

タブレット型運航支援システム「ナビン」




つまり「船をつくる会社」から船の仕組みそのものを提供する会社へ変わっているということです。


3. 未来への姿勢

東京藝術大学との共創プロジェクト「海上未来派」など、技術だけでなく“発想”の領域にも踏み込

んでいる点も印象的でした。




◾️港を起点にした実証フィールド


一般財団法人マリンオープンイノベーション機構


一般財団法人マリンオープンイノベーション機構( MaOI機構)は、静岡県が100%出資して2019年に設立された海洋分野のオープンイノベーション推進機関で、駿河湾を中心とした海洋資源とブルーテック( Blue Tech)を活用し、海洋産業の振興と海洋環境保全を両立する「ブルーエコノミー」の実現を目指しています。


こちらのブースでは、清水港を舞台にした取り組みで、海の技術が“社会実装されるプロセス”を 見ることができました。


「企業・自治体・研究機関が連携し、港そのものを実験場として活用する。」


ここで感じたのは、「船単体では未来は完成しない」ということです。


船の技術は、船だけで完結するものではありません。港で受け入れられ、都市の暮らしや産業とつながり、制度やルールに支えられてこそ、社会の中で本当に役立つものになります。


清水港での取り組みは、その第一歩がすでに始まっていることを感じさせるものでした。




◾️海事都市・今治のこれから


バリシップ2027開催記念イベントトークセッション「海事都市今治の未来創造」


このセッションは、単なる産業の話ではなく、「都市そのものをどうつくるか」という視点が中心で した。


1. B2BからB2Cへ

これまでの海事産業は企業間中心でしたが、今後は市民や子供たちに開かれた産業へと変わろうとしています。


・造船所の公開

・クレーン体験

・教育イベント


これは、“海を身近な存在に戻す動き”とも言えます。


2.海と街の再接続

北欧の港湾都市のように、港と生活空間を一体化させる構想も語られていました。


・港にオフィス・住居・商業が融合

・職住接近の環境

・人が集まり続ける都市設計


これは、単なるインフラではなく 人が生きる場所としての海の再設計です。


3. 人材と未来

教育機関との連携や、地域主導の再生プロジェクトなど、未来を支える人材育成にも強い意志が感じられました。


そして最後に語られたのは、DX(デジタル化)やGX(環境対応)を前提として、変化を待つのではなく、自ら新しい取り組みに踏み出していく積極的な姿勢です。


これは日本の海事産業全体に通じるメッセージだと感じました。




◾️海上通信は“前提条件”の時代へ


KDDI


KDDI株式会社(KDDI Corporation)は、日本を代表する総合通信事業者の一つであり、モバイル通信ブランド「au」を中心に、固定通信やインターネット、ICTソリューションなど幅広いサービスを展開する企業です。国内外で通信インフラを支え、5G・AI・DX領域への投資を通じてデジタル社会の発展を推進しています。




【セミナー:「Starlinkが開く海上通信とセキュリティの新局面」】


Starlinkの登場により、海上通信は「制限」から「前提」へと変わりつつあります。


1. 通信が変える船の役割


・高速通信による船内DX

・自律運航の基盤

・船員の生活環境向上


特に印象的だったのは、通信が単なる利便性ではな く、労働力不足という産業課題そのものを解決する手段になっている点です。


2. セキュリティは必須条件

一方で、サイバー攻撃はすでに現実の脅威となっており、「対策するかどうか」ではなくやってい

て当たり前の領域に入っています。


・GPSジャミング

・サプライチェーン攻撃

・内部デバイスリスク


さらに、IACSの規則「UR E26」により、サイバーレジリエンス(攻撃を受けても機能を維持する能力)が新造船の前提条件となっています。


3. 陸と海の一体運用

船単体での対応には限界があり、陸上からの監視・支援と一体化した運用が不可欠です。


KDDIは通信・セキュリティ・運用を一体で提供し、「安全なデジタル船舶」を支える構造を提示していました。




◾️まとめ


今回のSEA JAPANで感じたことは非常にシンプルです。 未来はすでに存在しています。


・水はつくれる

・船は進化している

・港は実証されている

・通信は常時接続されている


しかし、それらはまだバラバラに存在しています。これらの技術や取り組みを、どのように結びつけていくのか。 そして、それらをどのような形で社会の中に落とし込み、実際に役立つ仕組みとして実現していくのか。


その問いに向き合うことこそが、これからの海の可能性を決めていくのだと感じました。


今回の訪問は、海の未来が「概念」ではなく「すでに動き始めている現実」であることを教えてくれ る時間でした。




参考) ササクラ株式会社 https://www.sasakura.co.jp/ 三菱造船株式会社 https://www.mhi.com/jp/group/mhimsb/

一般財団法人マリンオープンイノベーション機構 https://maoi-i.jp/ バリシップ2027 https://www.bariship.com/ KDDI https://www.kddi.com/

bottom of page